ガソリンと軽油の間違い!修理代はいくら?対処法と保険を解説
こんにちは。【自動車整備士】GAMの頭の中、運営者の「GAM」です。
セルフスタンドが当たり前の光景となった昨今、うっかり種類の違う燃料を入れてしまう「誤給油」のトラブルは、ベテランドライバーであっても決して他人事ではありません。
普段は愛車の燃料を意識していても、会社の営業車や友人の車、あるいはレンタカーなど、いつもと違う環境でハンドルを握った瞬間、無意識の習慣がエラーを引き起こすことがあります。
今、このページを開いているあなたは、もしかすると給油ノズルを戻した直後に冷や汗をかいている最中かもしれません。
あるいは、高額な修理費用の噂に目の前が真っ暗になっているかもしれません。
特に近年のディーゼル車は「クリーンディーゼル」として高度に精密化されており、昔のエンジンのように「抜いて洗えば大丈夫」とはいかないケースが増えています。
エンジン始動後に気づいた場合の致命的な症状、JAFなどのロードサービスで現場対応できる限界、そして頼みの綱である自動車保険が適用されるのかどうか。
これらの疑問に対する答えは、時に残酷な現実を突きつけることもありますが、正しく知ることで最悪の事態を回避できる可能性もあります。
この記事では、現役整備士の視点から、誤給油をしてしまった際の緊急対処法や発生しうるリスク、そして気になる費用の相場について、現場の実情を交えて嘘偽りなく徹底解説します。
- エンジンをかける前と後で数十万円単位で変わる修理費用の相場
- ディーゼル車にガソリンを入れて走行した際に起こる「全損級」の故障メカニズム
- 自動車保険やレンタカーの免責補償制度が適用されない約款上の理由
- 誤給油をしてしまった直後、被害を最小限に抑えるために取るべき初動対応
ガソリンと軽油の間違いによる修理代の相場

燃料を入れ間違えた際に、すべてのドライバーが最も恐れ、そして知りたいと願うのが「修理代はいったいいくらかかるのか」という点でしょう。
結論から申し上げますと、その金額は車種や年式だけでなく、「エンジンをかけたか、かけていないか(キーをONにしたか否か)」という一点において、天国と地獄ほどの差が生まれます。
ここでは、状況ごとの具体的な費用の目安と、なぜそこまで高額になるのかという技術的なメカニズムについて、詳細にシミュレーションします。
エンジンをかけてない時の抜き取り費用

もしあなたが、給油中あるいは給油直後に「あっ!間違えた!」と気づき、一度もエンジンをかけていない(プッシュスタートボタンを押しず、キーをONにしていない)状態であれば、それは不幸中の幸いです。
この段階であれば、誤った燃料はまだ燃料タンクの中に留まっており、エンジンや精密な燃料ラインへは回っていません。
この場合の対処は、基本的に「物理的な回収」と「洗浄」で完了します。
具体的には、レッカーで整備工場へ運び、タンク内の混合燃料をすべて抜き取り、タンク内部を洗浄し、新しい燃料を入れるという手順になります。
ただし、近年の車両構造の変化により、この「抜き取り作業」も昔ほど単純ではなくなっています。
かつての車には燃料タンクの底に「ドレンボルト(排出用の栓)」があり、それを緩めれば簡単に燃料を抜けました。
しかし、最近の乗用車はコストダウンや安全性向上のため、このドレンボルトが廃止されているケースが大半です。
その場合、給油口から専用のポンプで吸い出すか、後部座席の下にあるサービスホールを開けてタンク内部にアクセスするか、最悪の場合は車両リフトで車体を持ち上げ、燃料タンクそのものを車体から取り外して逆さまにする必要があります。
タンク脱着が必要な場合、作業時間は数時間に及び、その分だけ工賃も跳ね上がります。
車種やタンク構造にもよりますが、おおよその費用感は以下の通りです。
| 作業項目 | 概算費用(目安) | 備考・詳細 |
|---|---|---|
| レッカー搬送費 | 15,000円 ~ 30,000円 | JAF会員や任意保険のロードサービス特約を利用できれば無料範囲内で収まることが多いですが、距離が長ければ超過分は実費となります。 |
| 燃料抜き取り・洗浄工賃 | 10,000円 ~ 30,000円 | タンク脱着が必要な場合は3万円を超えることもあります。給油口からの吸引で済めば安価です。 |
| 廃油処理費 | 5,000円 ~ 10,000円 | 抜き取った「ガソリンと軽油の混合物」は産業廃棄物として厳格に処理する必要があるため、処理費用が発生します。 |
| 新しい燃料代(満タン) | 5,000円 ~ 15,000円 | タンク内の洗浄効果を高め、残留成分を薄めるため、抜き取り後は満タン給油が推奨されます。 |
| 合計目安 | 35,000円 ~ 85,000円 | ディーラーや大手整備工場、タンク構造の難易度により変動します。 |
数万円から10万円弱の出費は決して安いものではありませんが、後述する「走ってしまった場合」に発生する数十万円、あるいは100万円超の修理費に比べれば、被害は最小限に食い止められたと言えます。
「高い勉強代だった」と割り切れるギリギリのラインで収まるのが、この「未始動」の段階なのです。
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エンジンをかけた後に走ると出る症状

最大の問題は、誤給油に気づかずにエンジンを始動し、走行してしまった場合です。
キーを回した(あるいはスタートボタンを押した)瞬間、燃料ポンプが作動し、誤った燃料がエンジン内部や高圧燃料ライン全体へと循環し始めます。
エンジン内部に異種の燃料が回ることで、物理化学的な破壊プロセスが進行し、ドライバーが体感できるレベルの深刻な症状が現れます。
ディーゼル車にガソリンを入れた場合(特に深刻)

最も被害が甚大になるパターンです。
ディーゼルエンジンは、軽油自体が持つ「潤滑性(油としてのぬるぬるした性質)」を利用して、超高圧で作動する燃料ポンプやインジェクタといった精密部品を保護・潤滑しています。
ここに、脱脂作用(油を洗い流す作用)の強いガソリンが入るとどうなるでしょうか。
燃料系統内部の油膜が一瞬にして洗い流され、金属部品同士が直接擦れ合うことになります。
これにより「凝着摩耗」と呼ばれる激しい摩耗が発生し、大量の鉄粉が生じます。
ガソリン車に軽油を入れた場合

一方、ガソリン車に軽油を入れてしまった場合は、ディーゼル車ほど即座に致命的な機械的破損には至りにくい傾向があります。
これは、ガソリンエンジンの燃料系がディーゼルほど高圧・高負荷ではないためです。
しかし、燃焼不良によるトラブルは避けられません。
軽油はガソリンよりも粘度が高く、揮発性が低いため、点火プラグの火花ではうまく着火しません。
その結果、プラグが軽油で濡れてしまう「かぶり」が発生し、火花が飛ばなくなります。
ガソリン車の場合、早めに対処すればプラグ交換と燃料入れ替え、オイル交換程度で復帰できるケースも多いですが、無理に走行を続けると触媒コンバータを傷める可能性があります。
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洗浄か交換かで変わるディーゼルの故障

現代のクリーンディーゼル車において、誤給油がなぜ「エンジンの全損」に近いダメージを与えると言われるのか。
その理由は、現代ディーゼルの心臓部である「コモンレールシステム」という超精密な燃料噴射装置の構造にあります。
コモンレールシステムは、排ガス規制をクリアしつつ高出力を得るために、燃料を最大2000気圧(約200MPa)以上の超高圧に加圧して噴射しています。
この圧力を生み出す「サプライポンプ」や、燃料を噴射する「インジェクタ」は、ミクロン単位の極めて微細なクリアランス(隙間)で設計されており、軽油の潤滑性なしでは成立しません。
前述の通り、ここにガソリンが混入してポンプ内部が摩耗すると、「キラキラした微細な金属の粉(コンタミネーション)」が発生します。
この金属粉は、血管を巡るウイルスのように燃料ライン全体に拡散し、インジェクタの微細な噴射孔を詰まらせ、リターン配管を通って燃料タンクに戻り、タンク内も汚染します。
整備現場で、燃料フィルターの中にこの「キラキラした粉」が見つかった瞬間、整備士は絶望的な診断を下さざるを得ません。
なぜなら、金属粉が回ってしまったラインは、もはや「洗浄」では取り除ききれないからです。微細な粉が一つでも残っていれば、それが再びインジェクタを詰まらせ、再発するリスクがあります。
したがって、完全な修理を行うには、燃料が通過するすべての部品を「総入れ替え」する必要があります。
- サプライポンプ交換:部品代だけで約10万円~20万円
- インジェクタ交換:1本4~8万円 × 4本 = 約16万円~32万円
- コモンレール(蓄圧室)交換:約5万円~10万円
- 燃料タンク、配管、フィルター交換:約10万円~20万円
- 脱着・交換工賃:エンジン周辺を大きく分解するため、15万円以上かかることも
これらを合計すると、修理代は容易に70万円~100万円コースに達します。
特に、年式の古い中古ディーゼル車の場合、車両の時価額よりも修理代の方が高くなることがあり、経済的な理由で「廃車」を選択せざるを得ないケースも少なくありません。
セルフスタンドで発生する原因と責任

誤給油をしてしまった時、やり場のない怒りや後悔から「セルフスタンドの店員が止めてくれなかったから、店側の責任ではないか?」と考える方もいるかもしれません。
確かにセルフスタンドでは、消防法の規定に基づき、危険物取扱者の資格を持つ店員がサービスルーム内のモニターで給油状況を常時監視し、安全を確認した上で「給油許可ボタン」を押す運用が義務付けられています。
しかし、現実問題として、モニターの映像越しに「その車がガソリン車なのかディーゼル車なのか」を外見だけで完璧に見分けることは、熟練の店員であっても不可能です。
同じ車種(例えばマツダのCX-5やトヨタのハイエースなど)であっても、ガソリンモデルとディーゼルモデルの外観上の違いは、リアゲートの小さなエンブレム程度しかないことが多く、監視カメラの解像度では判別できません。
また、法的な観点(消費者契約法や過去の判例など)から見ても、セルフ式スタンドを利用する場合、「給油する油種の選択と確認は、基本的にドライバー(使用者)自身の責任」とされるのが一般的です。
スタンド側に責任が問われる例外ケース

もちろん、例外が全くないわけではありません。
例えば、「スタンド側の誘導員が誤った給油機に誘導した」「給油ノズルの色が法令や規格と異なっていた」「タッチパネルの表示が著しく誤認を招く欠陥があった」といった、スタンド側に明らかな設備不良や重大な過失が認められる場合は、責任の一部または全部を問える可能性はあります。
しかし、多くのケースにおいては、ユーザー自身の「勘違い」や「確認不足」が原因であるため、誤給油による高額な修理費用をスタンド側に請求し、認めさせることは極めて難しいのが現実です。
「誰も止めてくれない」という前提で、自分の身は自分で守る意識が必要です。
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全損や廃車になり得る高額な請求事例

修理代が高額になる要因は、エンジンや燃料系の部品だけではありません。
現代のディーゼル車に必須の排ガス浄化装置「DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)」もまた、誤給油の二次被害を受けやすい超高額部品の一つです。
DPFは、排気ガス中のスス(PM)を捕集し、一定量溜まると高温で焼き切る(再生する)機能を持ったセラミック製のフィルターです。
しかし、ガソリンが混入した状態でエンジンが稼働すると、シリンダー内で異常燃焼が起きるだけでなく、未燃焼のガソリン成分が排気管へと流れ込みます。
この未燃焼ガスがDPF内部で反応して急激に燃焼すると、DPFの温度が設計限界(約600~1000℃)を遥かに超えて上昇する「サーマルランナウェイ(熱暴走)」が発生します。
こうなると、内部のセラミックフィルターがドロドロに溶けて詰まってしまい、排気が抜けなくなります。
溶損したDPFは洗浄や修理ができず、交換するしかありません。
- DPF新品交換:30万円~50万円以上
- DPFリビルト品(再生品):15万円~30万円程度
もし、燃料系(ポンプ・インジェクタ等)の全交換(約70万円)に加えて、このDPFの交換(約30万円)まで必要になった場合、請求総額は100万円を軽々と超えてきます。
「ちょっとしたうっかりミス」が、中古車が1台買えるほどの損害、あるいはローンだけが残って車は廃車という「実質的な全損」を招く可能性がある。これが誤給油の真の恐ろしさなのです。
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ガソリンと軽油の間違いで修理代を払う前に

実際に誤給油というトラブルが起きてしまった時、パニックになりながらも「何とか費用を抑える方法はないか」と考えるのは当然のことです。
ここでは、多くの人が頼りにする自動車保険の適用可否、ロードサービスの活用範囲、そしてレンタカーの場合の特殊な事情について整理します。
自動車保険や車両保険は使えるのか

多くのドライバーが万が一のために加入している自動車保険(車両保険)。
「車が壊れたんだから、当然保険で直せるはず」と思いがちですが、ここには大きな落とし穴があります。
一般的な車両保険は、「他車との衝突」「電柱への接触」「落下物」「火災」「盗難」といった、偶然かつ外来の事故による損害を補償することを主目的としています。
これに対し、誤給油によるエンジントラブルは、ユーザー自身の不注意や使用方法の誤りに起因する「故障」とみなされることが一般的です。
多くの保険会社の約款において、「故障」は免責(補償対象外)とされており、基本的には誤給油の修理代は保険金支払いの対象外となるケースが大半です。
「事故ではなく、整備不良や取り扱いミスに近い」という判断がなされるためです。
例外:特約や保険会社による対応の違い
ただし、すべてのケースで絶望的というわけではありません。
一部の保険会社や、契約に付帯している特約(例:「故障運搬時諸費用特約」や「ロードサービス費用特約」など)の内容によっては、修理費そのものは出なくても、レッカー代や帰宅費用、宿泊費用などがカバーされる場合があります。
また、ごく稀なケースですが、誤給油に至る経緯に「外部からの要因(スタンド側の過失など)」が強く認められる場合など、状況によっては相談の余地があるかもしれません。
自己判断で諦めず、まずは保険会社の事故受付窓口に「誤給油をしてしまったのですが、補償される部分はありますか?」と正直に伝えて確認することをおすすめします。
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レンタカーで誤給油した時の自己負担

旅行先や引っ越しで、普段乗り慣れないレンタカー(特にディーゼルのハイエースやトラックなど)を借りた時こそ、誤給油のリスクは最大化します。
もしレンタカーで誤給油をしてしまった場合、ユーザーは以下の費用を請求されることになります。
- 修理実費:修理にかかった費用全額
- NOC(ノンオペレーションチャージ):車両が修理期間中に使えなくなったことへの営業補償(自走可能なら2万円、自走不可なら5万円程度が相場)
- レッカー代:指定距離や補償範囲を超えた分の搬送費用
ここで極めて重要なのが、レンタカー契約時に加入を勧められる「免責補償制度(CDW)」の存在です。
「これに入っておけば、万が一事故っても大丈夫」と安心して加入する方が多いですが、実は多くのレンタカー会社の約款において、「誤給油による損害は、免責補償制度の適用除外項目」と明確に記されています。
つまり、たとえ「安心パック」のようなフルカバーの保険に入っていたとしても、誤給油による数十万円の修理代については、保険が下りず全額ユーザーの自腹になる可能性が非常に高いのです。
レンタカーを借りる際は、その車がディーゼルなのかガソリンなのか、貸渡証や給油口のステッカーを出発前に必ず確認する癖をつけましょう。
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JAFなどのロードサービスができる範囲

誤給油に気づいた時、JAFや自動車保険付帯のロードサービスは非常に頼りになる存在です。
しかし、彼らが「現場で何をしてくれるか」については、正しく理解しておく必要があります。
基本的に、ロードサービスが現場で行ってくれるのは「整備工場へのレッカー搬送」までです。
現場での燃料抜き取り作業は原則できません。
よく「その場でタンクから燃料を抜いてほしい」と依頼される方がいますが、消防法や安全管理の観点から、路上やガソリンスタンドの敷地内で隊員が燃料を抜き取る作業は行いません。
ガソリンや軽油は危険物であり、専用の設備がない場所での抜き取りは火災リスクが高く、廃油の処理もできないためです。
したがって、ロードサービスを呼んだとしても、その場で復旧してドライブを再開することはできません。
必ず最寄りのディーラーや整備工場へ運んでもらい、そこで本格的な修理を受けることになります。
(出典:JAF『よくあるロードサービス出動理由』などによれば、燃料の入れ間違いによる救援依頼は年間を通じて一定数発生しており、決して珍しいトラブルではありません。)
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給油口の確認などの有効な対処法

ここまで、誤給油が発生してしまった場合の恐ろしいリスクと費用についてお話ししてきましたが、最も重要なのは「そもそも間違えないこと」に尽きます。
人間である以上、ミスを完全にゼロにすることは難しいかもしれませんが、物理的な仕組みを知り、行動習慣を変えることで、限りなくゼロに近づけることは可能です。
ここでは、整備士として推奨する具体的な防止策と、知っておくべき給油設備の知識について詳しく解説します。
給油ノズルの「太さ」と「色」の違いを知る
ガソリンスタンドの給油ノズルには、誤給油を防ぐための物理的な工夫が施されています。
その一つが「ノズルの太さ(外径)」の違いです。
- 軽油用ノズル(緑色): 外径 約24mm(太い)
- ガソリン用ノズル(赤色・黄色): 外径 約20mm(細い)
この差には明確な理由があります。
一般的にガソリン車の給油口には、細いガソリンノズルしか入らないように狭いリストリクター(給油口の入口にある弁のような金具)が付いています。
そのため、太い軽油ノズルをガソリン車に差し込もうとしても、物理的に奥まで入らず、「あれ?入らないな」と気づくことができます。
これにより、「ガソリン車に軽油を入れてしまう」ミスは、物理的に起こりにくい構造になっています。
最大の落とし穴:ディーゼル車には「細いノズル」が入ってしまう
問題は逆のパターンです。ディーゼル車(軽油車)の給油口は、太い軽油ノズルを受け入れるために広く作られています。
そのため、細いガソリンノズルは抵抗なくスッポリと奥まで入ってしまうのです。「入ってしまう」からこそ、ユーザーは違和感を覚えることなく満タンまで給油し、エンジンをかけて走り出してしまいます。
これが、「ディーゼル車へのガソリン誤給油」が圧倒的に多く、かつ被害が甚大になる最大の理由です。
また、ノズルの色は法令やJIS規格等に基づき、全国共通で統一されています。
- ハイオク: 黄色
- レギュラー: 赤色
- 軽油(ディーゼル): 緑色
「軽油は緑、トラックも緑」と視覚的に刷り込んでおくことが大切ですが、セルフスタンドによってはノズルの持ち手部分が汚れて色が判別しにくかったり、カバーが劣化していたりすることもあります。
色だけに頼らず、必ず文字表示も確認しましょう。
「油種確認ステッカー」を目視・指差し確認する
自分の愛車であれば間違えることは少ないでしょう。
リスクが高まるのは、「代車」「レンタカー」「会社の車」「家族の車」など、普段乗り慣れていない車を扱う時です。
特に、最近のマツダ車(CX-5、CX-60など)やトヨタのランドクルーザー、ハイエースなどは、同じ外観でガソリン仕様とディーゼル仕様の両方が存在するため、見た目だけで判断するのはプロでも危険です。
給油の際は、必ず以下の手順をルーチン化してください。
- 車を停めてエンジンを切る。
- 給油口のフタ(リッド)を開ける。
- フタの裏側に貼ってあるステッカーを見る。 (「無鉛ガソリン」「軽油」「DIESEL」「UNLEADED」などの表記があります)
- 給油ノズルの色と文字を見て、ステッカーの指定燃料と一致しているか指差し確認する。
たったこれだけの「数秒の確認」が、数十万円から100万円の損失を防ぐ最強の防壁となります。
もしステッカーが貼られていない、あるいは剥がれて読めない場合は、勝手な思い込みで給油せず、必ず車検証を確認するか、管理者(レンタカー会社など)に電話で問い合わせてください。
「たぶん軽油だろう」という憶測は、ロシアンルーレットと同じです。
燃料添加剤による日頃のメンテナンス
これは誤給油そのものの防止策ではありませんが、ディーゼル車オーナーの方にぜひ知っておいていただきたい「燃料系の健康管理」の話です。
記事の前半で、ディーゼルエンジンのインジェクタがいかに精密で、デリケートな部品であるかを解説しました。
誤給油をしなくても、長期間走行していると、インジェクタ内部には微細な汚れ(デポジット)が蓄積し、噴射パターンの乱れやパワーダウンを引き起こします。
誤給油ほどの壊滅的なダメージではありませんが、インジェクタ詰まりによる交換費用も高額です。
そのため、定期的に信頼できる「燃料添加剤(インジェクタクリーナー)」を使用し、燃料ラインを洗浄・保護しておくことは、長く調子よく乗るための賢い投資と言えます。
日頃から燃料系に関心を持ち、大切に扱う意識を持つことが、結果として給油時の注意深さにもつながるはずです。
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ガソリンと軽油の間違いによる修理代に関するよくある質問 (FAQ)

- Qガソリンと軽油を入れ間違えた時の修理代は?
- A
エンジンを一度もかけていなければ、タンク内の燃料を抜き取り・洗浄して正しい燃料を入れるだけで済むことが多く、レッカー代を含めても数万円〜10万円弱が目安です。
逆に誤給油後にエンジンを始動し走行してしまうと、燃料ポンプやインジェクター、配管などが広範囲に傷み、部品の総交換が必要になるケースもあります。
この場合は数十万円〜100万円超まで膨らむ可能性があります。
- Qディーゼル車にガソリンを入れて走るとどうなる?
- A
ディーゼル車は軽油の「潤滑性」を前提に設計されているため、脱脂作用の強いガソリンが混ざると燃料ポンプやインジェクター内部の油膜が剥がれ、金属同士が直接こすれて摩耗します。
その結果、カリカリ音や白煙、出力低下が起こり、最終的にはエンジン停止に至ります。
内部で発生した金属粉は燃料ライン全体に回り、洗浄だけでは取り切れないため、重症になると燃料系の総入れ替えが必要になることがあります。
- Q誤給油した場合、自動車保険や車両保険は使える?
- A
一般的な自動車保険の車両保険は、衝突や火災など「偶然の外部事故」による損害を補償する設計であり、誤給油はドライバーの取扱いミスによる「故障」と判断されることが多いため、修理費そのものは補償対象外となる契約が大半です。
ただし、契約している特約によっては、レッカー搬送費や帰宅・宿泊費などの付随費用が出る場合があります。
自己判断で諦めず、必ず加入中の保険会社に誤給油の状況を説明して、補償の有無を確認することが重要です。
- Qレンタカーで誤給油したら修理代はいくら負担?
- A
レンタカーで誤給油した場合、多くの会社では約款で「油種間違い」を免責補償制度(CDW)の適用外と定めており、修理実費は借り手の全額負担になるケースが一般的です。
加えて、修理で車が使えない期間の営業補償としてNOC(ノンオペレーションチャージ)が自走可なら2万円前後、自走不可なら5万円前後請求されることが多く、レッカー代の一部も負担対象になります。
合計すると数十万円規模になる可能性があるため、出発前に燃料の種類と約款の「誤給油」の扱いを必ず確認しておきましょう。
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ガソリンと軽油の間違いと修理代を総括
今回の記事のまとめです。
ここまで読んでいただいたあなたは、たかが燃料の入れ間違いが、現代の自動車においていかに深刻な「事件」となり得るか、深く理解されたことと思います。
結論として、ガソリンと軽油の間違いによる経済的・技術的リスクは以下の通りです。
- 修理費用の境界線は「エンジン始動」にある: エンジンをかける前であれば数万円(抜き取り・洗浄のみ)で済む可能性が高いですが、かけて走行してしまった場合は、数十万円から100万円超(燃料系全交換・DPF交換)の請求になるリスクが跳ね上がります。
- クリーンディーゼルは特に脆弱: 精密なコモンレールシステムにとってガソリンは「毒」であり、金属粉による汚染はシステム全体を全損させます。
- 保険や補償は期待できない: 一般的な自動車保険やレンタカーの免責補償制度では、誤給油は「過失による故障」とみなされ、補償対象外(全額自己負担)となるケースが大半です。
- 初動対応が運命を決める: 給油中にミスに気づいたら、何があってもエンジンをかけないでください。走行中に違和感(異音・出力低下)を感じたら、直ちに安全な場所に停車し、エンジンを切ってロードサービスを要請してください。「もう少し走れるかも」という判断が、傷口を致命傷に広げます。
- 最大の対策は「確認」のみ: ノズルの色、給油口のステッカー、そして自分の思い込みを疑うこと。この数秒の手間だけが、あなたの大切な資産を守る唯一の確実な方法です。
人間はミスをする生き物です。疲れている時、焦っている時、誰にでも「うっかり」は訪れます。しかし、そのミスに対して正しい知識で対処できるかどうかで、その後の結末は大きく変わります。
もし今、誤給油をしてしまってこの記事に辿り着いたのであれば、焦らず冷静に、まずはエンジンキーをオフにしてください。
そしてプロの整備士やロードサービスに助けを求めてください。この記事が、あなたの愛車と家計を守るための一助となれば、現役整備士としてこれほど嬉しいことはありません。
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